2023年11月15日水曜日

QWERTY/ロウスタッガードに対する自分なりの思考と追求


 QWERTYという配列が効率的ではない、という議論はすでに行われており、実情としてそれに異を唱えることは井の中の蛙的行為かもしれません。ですが、実際に多くのユーザーが触れる最初のキーボードはQWERTYでロウスタッガードという伝統的なレイアウトである可能性が高いのではないでしょうか?

 キーの配置、一部キーのサイズに差異はあれど、多くの市販パソコンに同梱される、内蔵されるキーボードのレイアウトは性能が向上し続ける今でもQWERYでロウスタッガードのように思えますが、キーボードにこだわる人には不満な実情かも知れませんね。

 そんなQWERTYでロウスタッガードなレイアウトですが、私は好んで愛用し続けています。



 QWERTYでロウスタッガードなレイアウトが非効率的と言われる原因はアルファキーの配置とズレかなと思われますが、QWERTYの非効率な配置については保守的な理由から私は無視しています。それは多くの方がぶつかるかもしれない「職場(学校)のキーボードと異なると混乱を招きそうだから」という理由です。これ、結構「慣れたら使い分けられるよ」と思う方がいらっしゃるかと思いますが、永遠に慣れないという人間もいるのだと、頭の片隅に置いて頂けたら幸いです。……本当に、「あれ?」ってなるんですよ……本当に(大事なので2回言いました)。

 QWERTYはとりあえず棚上げするとして、問題はロウスタッガードのズレと配置です。私自身の感覚では、これが最も使い難さを生む要因であると感じています。


図1 同幅ズラしロウスタッガード


 図1は私が好んでいるレイアウトのアルファキー部分だけ切り取ったものです。これに違和感を覚える人はかなり敏感かもしれません。ZXCVの横ずれが、一般的なロウスタッガードと比べると小さくなっています。これは全体的なバランスの中で生まれたレイアウトのひとつかもしれませんが、私は単純にBを左の指で打ちやすく、使いやすかったので採用しました。これについて「だから?」と思われる方はおそらく現在使用しているキーボードのレイアウトで不満が無い、気にならないのだと思いますが、タイピングの癖がしっかりつかずに右手エリアと左手エリアが混雑している人間にとってはBをどちらの指で打つか問題は時に激しいイライラを生じさせてしまいます。それが、私の場合はこのレイアウトでほぼ解消されるのです(たまに右手で打ちますが)。

 そういったことは、違うキーでも生じると思います。T、G、B、Y、H、N、この辺りのエリアはかなりギリギリで、教科書的なタイピングの視点からすると越境して打鍵していることがあるかもしれません。別に、ちゃんとタイピング出来れば良いかもしれませんが、効率という観点で言えば、そうやって乱れ続けるのは非効率でしょう。競技に出るとか出ないではなく、疲れるし勿体ないと思える部分です。


図2 Acty試作レイアウト

 図2はアルファキーに文章を打つ上で最低限必要な『、』と『。』を使えるようにした上で各モデファイアキーを配置したものです。私が作ったActy-45のレイアウト途中のものを再現したものです。必要最低限な状態で組もうとすると、全体のレイアウトが中心よりも左が広く見えないでしょうか? ホームポジションに指を置いた時、このレイアウトでは手の位置が右寄りになってしまいます。つまり、左手がカバーするエリアが広い、ということです。これは実際に市販されているQWERTYロウスタッガードと比べると逆のバランスになっています。

図3 市販日本語配列キーキャップ適合レイアウト

 図3は既存日本語キーキャップに合せてレイアウトしたらどうなるか? という試みでレイアウトした日本語配列キーボード案ですが、オレンジで色を変えたキーの数に注目してください。左が5に対して、右は6です。右手がカバーするエリアが広いようですが、実際にはこのレイアウトは市販のものと比べると右手エリアのキーが少ないです。つまり、一般的なキーボードにおいてはより右手がカバーするエリアが広いということになります。


図4 KLEの60%ISO配列プリセット

 図4は日本語配列ではなくISO配列ですが、物理配列はほぼ参考になるのでそのまま用います。これを見ると、右手エリアは7キーに増えているのがお分かりいただけるかと思います。ホームポジションに指を置いた場合、右手が担当するエリアは左手と比べて広大になってしまいます。「横で2キー増えただけで大袈裟な……」と思ったあなたは、きっと幸せなことでしょう(嫌みではなく、それを使い難いと感じない対応力を羨んでいます)。
 横だけで見れば、『ただ』2キー増えただけですが、キーボードは横一列だけのスティック形状ではありません。縦、そして斜めにもキーがあることを忘れてはいけません。横に広がるということは、対角線となる角、右上と右下にある角のキーが遠くなることを意味します。

図5 Acty-45

 図5を見ていただくと、図2とあまり変化が無いように見えますが、ASDF列の左右キー数を合せてあります。私がグダグダと展開したアンバランス問題を解決しようというひとつの手ですが、察しの良い方ならお分かりかと思いますが、これでも実際は左右バランスの解決は不完全です。なぜなら、ホームポジションに手を置いて左右の小指を伸ばした場合、右手の小指の方が伸ばす形になるからです。そしてそれこそ、ロウスタッガードの課題というか問題点であるということなのでしょう。


 こうして「結局ロウスタッガードは駄目だ」と思われても仕方の無い結末となってしまいましたが、実際のところ私はこの問題を完全に解決できるとは思っていませんでした。何故なら、カラムスタッガードやオーソリニアの方が上下左右のバランスを明らかに解決できているからです。理論的なものの前に、感覚的に「駄目だろうな」とは思っていたということです。

 では、何故やったのか? それは、私がロウスタッガードを愛用しており、嫌いではなかったからです。カラムスタッガードと併用するようになって、私はロウスタッガードを初めて使い難いと感じましたが、それでも手放したくなるほどの憎しみは抱きませんでした。むしろ、「どうにかしてロウスタッガードで使いやすくならないだろうか?」と思うようになったほどです。結果的に、Acty-45の完成により私のための、私の理想に近いキーボードは作れたのではないかなと思うので、やって良かったですね。




 自分自身で満足できていればそれで良いとは思うのですが、一方で「胸を張って自慢できるキーボードを仕上げてみたいな!」という想いが無いわけでもないので、今後はロウスタッガードだけど使いやすいキーボードを、自分のためだけではなく、誰でも使えそうなキーボードとして作れたら良いなと。そんな小さな夢があります。


この記事はActy-45で書きました。

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