2024年5月18日土曜日

あらためて考える、左右バランス追求の困難


 自設計キーボード、Acty-45&Acty-31は『左右バランス』というものを意識して設計しました。結果、ホームポジションに置いた状態での手の動きというものが左右で大きな差異が生まれなくなり、身体的にも心理的にもバランスが取れた(と思える)状態になりました。

 今回は、あらためてその『左右バランス』について考えつつ、今後の(自分が行う)設計というものについて考えてみようと思います。


※筆者のお気持ちです。



 そもそも、左右にバランスを求めるのであれば、カラムスタッガードやオーソリニアを使うのが手っ取り早いのは確かです。あれは上下左右にとてもバランスが取れた配列だと思います。しかしながら、ロウスタッガードをそのまま諦めるというのも勿体ないというか、出回っているキーボードはロウスタッガードを多く見かけるわけですし、それらとの使い分けにおいて移行しやすい、違和感が少ないキーボードを愛用できたら良いなというのは、思う人もいるはずです。たぶん。

 ロウスタッガードの問題点は、QWERTY配列の問題を別とすれば、左右で手がカバーする領域の広さが異なることだと思っています。左手に比べて、右手がカバーする領域が広すぎるということです。その問題を頭に置いた上で、ロウスタッガードで左右バランスを整えて使えるキーボードを、と考えた結果が私のActy-45&Acty-31です。この辺りのお話は以前に記事にしているので、お時間やご興味がある方はそちらをご覧ください。



 基本のアルファベットを配置した上で、左右の手でカバーする領域を≒(殆ど等しい)にしたい。その結果がActyロウスタッガード・レイアウトです(ネーミングは適当なので今後呼ばない可能性大)。既に誰かが試みたレイアウトかもしれませんが、大事なのは自分が使うことです。ロウスタッガードの時点でオリジナリティなんて、出すのは難しいですからね



 使いやすさ、一般的なロウスタッガードとの切り替えが楽なように作ったActy-45はモディファイアキーを入れた上で左右バランスが取れるように苦心しました。上の画像で赤くなっているキーが気持ち的に入れない方が良い気がするけれども、入れた方がバランスが良いと悩ましかったキーです。

 左右バランスの起点は、ホームポジション――つまり、FとJに人差し指を置いた状態です。そこから左右にどう広がるか、最大まで領域を使った場合に左右のカバーする領域に偏りがないか? そこを注視しています。Acty-45では左右外側に1キー余り、Acty-31では余りが無い状態で左右それぞれ同じ状態(厳密には右手エリアが若干外側ではありますが)に持っていきました。これにより、手を大きく動かすことなくタイピングが出来るようになり、特に私の場合は右手エリアでのタイピングミスが減りました。これは右手エリアがホームポジションから遠いところにキーの配置がされていた、というのが大きく、それが解消されたためにタイピングミスが減ったと思われます。遠いと、指が届かない・届きにくいといったことがありますが、近ければそれも無くなるわけですからね。


 左右バランスの追求はタイピングにおいてユーザーの快適性を向上することに繋がると思われますが、一方で見た目上の『デザイン性』というものを維持する・向上することが難しいように思えました。それが、キー数とキーサイズの不一致性とでもいうべき問題で、左右がカバーするキー数と、実際に指が触れるキーのサイズが異なっているという事実です。Acty-45もActy-31も、この問題を解決することは出来ませんでした。単純にキーサイズをすべて1Uにすれば、サイズ的な問題は解決しますが、見た目上のデザイン性というものは損なう方向に向かってしまうと思います。そこを解決することが、ロウスタッガードで左右バランスを追求する場合の最大の『壁』だと思われ、現状でそれを解決することは私には出来ませんでした。

 左右バランスの追求、と何か凄いことをやっている風に言いつつも現実としてデザイン性の問題を解決できず、妥協しているのは認めざるを得ません。いや、これを認めないことこそ先の無い、意味の無いトライだと思います。ただ、認めたところでそれを解決に導ける材料はなく、私がロウスタッガードキーボードを今後も作っていくとして、永遠の課題になりそうですね。



 実際に使用していて「こんなに指と心に馴染むキーボードはなかなかないのでは?」と思ったりしますが(とはいえ、もっと使用感の心地良いキーボードがあったりしますが。なんというか、それはそれ、みたいな感じで別方向で心地良いわけでして)、現状ではいくつかの妥協の上で成り立っているバランスだと思っています。これをさらに追求していくことで崩れてしまうのか? それともさらに良くすることが出来るのか? その問いへの答えは、今後少しずつ見えてくるのでしょうか……まだまだ、先は長そうです。


この記事はActy-31で書きました。

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